松田洋子の赤い文化住宅の初子は必読
出版情報
『赤い文化住宅の初子』
・作者:松田洋子
・短編全3話
・発行所:太田出版
・2003年発行
・定価979円
集録作品
赤い文化住宅の初子
1. 赤毛のアン ビシャス
2. 十五歳少女漂流記
3. Right Light
4. DIE DAMN END
PAINT IT BLUE
1. 青春の鎖国
2. Welcome to Fool’s Paradise
3. キレル リアル スメル
4. Factory of Dreams
アトガキマンガ
1. ハッコちゃんとカットくん
深刻な日常をコミカルに描く天才
本日は松田洋子さん著『赤い文化住宅の初子』をご紹介
その前にこの松田洋子さんの経歴が面白い
生活の糧を得るために30才で漫画家を目指すってのもすごいけど
そんではじめ書いたマンガが大賞受賞でデビューって!
それこそマンガみたいな話を地で行く漫画家さんです
ということで、今回は怪奇漫画のカルトな世界・番外編ですね
怪奇でも幻想でもありません
しかし!泥沼の現実が詰まっています。こういったのも好きなんです
近藤ようこさんとかね
赤い文化住宅の初子
それにしてもこの作品は メチャクチャ重い!
そして広島弁がパンチ効いてます
虐待とかいったヘビーなのとは違うんですけどね
父親は失踪 母親は他界 兄と二人 風呂なしの古い文化住宅で倹しく生きる初子
同級生の当たり前が初子にとっては別次元
ただいまを言ってくれる人がいない中学生・・・ 日本にも今けっこーいるのかなぁ
救いはボーイフレンドのピュアな優しさ
けどその彼ともお別れの時の初子のセリフ
どんなんなっても、家族になろう、いうてくれる人がおったら希望はおわらんよ。
健気で切なくて泣けてくるわ((泣
見て無いですが『赤い文化住宅の初子』は映画にもなってます
PAINT IT BLUE
嗚呼!もぉ!リアルもリアル
地方都市の小規模事業主とそれに従事する人々の日常が
すばらしくセンスよく描かれています
とにかくハイセンス!!
父親が営む原工作所で働く息子の実郎と そこのロートル従業員の徳さんの会話
徳さん『わしなんかもう 赤弁のおかずに一喜一憂するだけの日々よ そんなんなっちゃだめよ』
実郎『それでええが リアルな日常の幸福で! それだけじゃ許されん若者はつらいわあ』
このセリフね 今自分が徳さんと実郎の間くらいの年なって妙に響くのよ
どっちかっていうと すでに徳さん側の立ち位置で
小さな幸せ噛んでいればいいだけになったのに
まだここから何かを目指さなくてはいけない気持ちが消えない
松田さんの作品なら『薫の秘話』これもおすすめ
高い自尊心のため他人とのコミュニケーションがままならない
太って禿げたホモで無職の中年男 薫くんが
高齢の母親に依存して生ぬるく生きている様を
コメディタッチで同情の余地なく描いています
松田さんの作品からわかること
【生きにくい世の中を皆必死で生きている】
それに尽きると思います