成毛厚子【水迷宮】
出版情報
『水迷宮・第一巻』
・短編全5話
・発行所:小学館
・1985年発行
・定価380円
集録作品
・柘榴(ざくろ)幻想
・炎天
・殻
・生贄(いけにえ)
・ボビィをさがして
心の闇をえぐったホラー&サスペンス
成毛厚子さん『水迷宮』をご紹介します。
成毛厚子さんもメチャクチャハマりました!
心霊ものを中心に心の闇をえぐったホラー&サスペンスを
長きにわたって書き続けています。
この1冊で全作品に共通しているのは、
主人公たちがまだ年若くして転落している点です。
ある日起きた出来事に縛られ心がそこから離れない。
何度でも繰り返し《あの時》に戻っていき、そして無常に時だけが過ぎていく。
そしてその壊れた心のまま不毛の一生を送るのです。
これだけ中身の濃い作品集はなかなかお目にかかれません。
ス-っと汗が引き、音も景色も遠ざかり、白く霞がかった世界に自分だけ・・・
そんな情景が浮かび、孤独の恐怖を強く感じる一冊。
読み終わった後の薄ら寒い感じがいつまでもあと引くことでしょう。
作品ピックアップ
柘榴幻想
またあの夢を見た。
物心ついてから、同じ夢、同じ風景、
ぼんやりと浮かぶザクロの木。
あれはいったいどこなのだろう。
そしてあの夢を見たあとはきまって、
いいようのないもどかしさにおそわれる。
わたしは何を探しているのだろう。
引用元:『柘榴幻想』より
主人公の名前は絢子。絢子は幼い頃から同じ夢を見続け、
その夢を見る度、何ともいえぬ焦燥感を募らせていました。
そんな絢子が大学受験に失敗し浪人生活を送っていると
入学のため上京している遠縁のハルカから彼女の帰省に誘われ
絢子の祖母の故郷でもある彼女の田舎を訪れます。
そこにはハルカの祖母で絢子の祖母ミワの幼馴染であるマツがいたのですが
高齢のマツは少しボケており、絢子のことを祖母ミワと混同してしまいます。
しかし奇妙なことに
でたらめを言っているかと思われたマツの言葉は絢子の夢とシンクロし、
やがて夢の内容が鮮明になっていくのです。
そしてとうとう、実際に夢に見続けたあの場所にたどり着くのですが
よっぱ
記憶が隔世遺伝するなんてことが本当にあるのでしょうかね、
リンク
女の情念が怖い漫画なら『ささやななえ』も必見!