日野日出志【地獄の子守唄】
出版情報
ひばりヒットコミックス『地獄の子守唄』
・作者:日野日出志
・短編全7話
・発行所:ひばり書房
・1972年発行
・定価260円
集録作品
・蝶の家
・七色の毒蜘蛛
・白い世界
・博士の地下
・どろ人形
・地獄の子守唄
・らくがきコーナー(1~4)
昭和トラウマ漫画の巨匠
現在の日本ホラー漫画界の巨匠はやはり伊藤潤二先生と言えるでしょうが
ちびっ子にトラウマをうえつけた昭和ホラー漫画で巨匠といえば日野日出志先生。
そして日野先生の代表作がこの作品です。って勝手に思ってますが、きっと正解。
初版本の袖部分に先生の写真つきプロフがついてます。
『三島由紀夫』風で、先生けっこー男前。
作品ピックアップ
蝶の家
病で脳に障害を負った少年は、その顔も可愛かった昔の面影のない醜い姿に。
父からも母からも疎まれるようになります。
幸せだった頃に父がくれた蝶の標本だけが寂しさを紛らわせてくれる・・・
そして幼虫を育て蝶を羽化させることに執着していきます。
私は昆虫が大の苦手です。それは日野&古賀先生の作品がトラウマ
七色の毒蜘蛛
米兵に目の前で妻を犯されその場で自殺させてしまって以後、父親は酒とギャンブルに狂い息子を虐待し続けます。
しかし少年は思っていました。
父親は背中の蜘蛛に操られているのだと。
『ちえ~すと!』この奇声は昭和ジャパンホラーとパンク音楽で多用されます。
白い世界
親に捨てられた少女の悲しい末路。
なにも知らない少女はおばあさんと母親の帰りを待ちますが、
そのおばあさんも亡くなってしまいます。
するとその夜・・
昆虫や惨殺シーンの醜悪さとは真逆に、日野先生の描く白の描写はとても美しいです。醜さも苦しさも怖さも払拭してくれる美しい「白の世界」。「七色の毒蜘蛛」で父親が肥溜めに顔を突っ込んで死ぬシーンの雪がもたらす完璧な静けさと美しさ。続く「白い世界」の寂しみ痛みを全て消し去ってくれる美しい雪のラストシーン。まさに陶酔の世界といえます。
地獄の子守唄
ありとあらゆる残虐な方法で人を殺す力を手に入れたと考える主人公の、妄想殺戮大全集。
ラストで発せられる渾身の捨て台詞「きみが死ぬ番だ!」ここで描かれる主人公の表情に日野先生の気合を感じます。