日野日出志【私の悪魔がやって来る】
出版情報
タツミコミックス
『私の悪魔がやって来る』
・作者:日野日出志
・短編全9話
・発行所:辰巳出版
・1991年発行
・定価800円
集録作品
・白魔の伝説
・埴輪森暗黒日輪伝説
・竹藪地獄怨絵草紙
・ミス・ジッパー
・私の悪魔がやって来る
・女郎蜘蛛
・砂地獄
・水色の部屋
・花の女
概要と主観
恋愛への甘い幻想を木っ端に打ち砕く、生々しく痛ましい男女の関係が描かれています。
冒頭二話でいきなり近親相関もの、兄妹編から親子編と続き、レイプ被害からの展開・末路がズラリ並びます。

重いです
日野作品はとかく猟奇的惨殺シーンばかり取り上げられますが、逃げ場のない日常を描いたこちらの作品で日野先生の真髄が究められます。
作品ピックアップ
白魔の伝説
雪の降り積もる中、母親に捨てられた幼い兄と妹は孤児院に引き取られます。
それ以来二人はいつも一緒に過ごしました。
成長し孤児院を出た後も小さなアパートでまるで夫婦のように仲良く暮らします。
年頃になりそれぞれに恋人を持ちますが、不思議と兄の彼女は妹に、妹の彼氏は兄にとてもよく似ていたのでした。
結婚してはじめて離れて暮らす兄と妹。
しかし、兄の妻は半年も経たずにアパートを出て行き、同じく妹も破局し兄の元に戻ってきます。
二人にはその理由がわかった気がしました。そして二人して雪山に登ります。
私の悪魔がやって来る
圭子は夫との性生活に満足できないで悩んでいました。
それは圭子が女学生だった頃、隣に住んでいた醜く歪んだ顔をした白痴の男が関係します。
男はちょうど自宅の庭に面した圭子の部屋を覗き見していたのですが、それを知っている圭子はわざとカーテンを少し開けて自分の姿を見せつけていました。
悩ましい姿をさらし男の気を引くことは圭子にとってスリリングなゲームだったのですが、ある夜その男が部屋に押し入りレイプされてしまう夢を見ます。
醜い白痴に無理矢理犯される夢の体験は思春期の圭子に強烈なインパクトを残し、その後は頻繁に男に凌辱される夢を見るようになりました。
そしてそれは圭子の性的イメージを決定付け、ノーマルなセックスでは満足感できなくなっていったのです。
女郎蜘蛛
故郷を捨て上京したある女の人生。
幼い頃は田舎で天真爛漫に育ったユキ。
しかし母親は寝たきりとなり父親は出稼ぎに出たまま戻らなくなります。
頼りになるのは姉の夫。義理の兄に生活を支えられユキは学校にも通わせてもらいます。
ある日妊娠した姉を見舞った帰り道で、夜道は危険だからと付き添ってくれた義理の兄がユキを襲ったのです。
その後寝たきりの母が亡くなるとユキは田舎を出て東京へ向かいます。
『東京へ行けば何とかなる』
そう自分に言い聞かせ上京したユキでしたが、水商売からソープランドとお決まりの転落人生を送ることに・・・