諸星大二郎・傑作短編集【諸怪志異シリーズ】
伊藤潤二先生を紹介する中で「異界」という言葉が出ましたので、
「異界」と言えばこの御方!
諸星大二郎先生をご紹介します。
そもそも伊藤潤二の世界は、シチュエーションそのものが摩訶不思議の異次元ワールドなので、その中で異界という設定が成り立たないんですよね。

失敬失敬
当人はあくまで日常にいて、ふと迷い込む、垣間見えてしまう世界。それこそが「異界」です。
その点このモロ作品は、登場人物がどんな不思議な力を持ち合わせようが、生活そのものはリアルな日常の中にある点は揺ぎ無いです。
古代中国、アマゾン、現代日本、未来…と、どの世界からでも変幻自在に異界へいざなうモロ先生!
その諸星先生を知るきっかけとなった作品が
“阿鬼ちゃん”シリーズの第一作目「異界録」。

ジャケ買いです
ザクッといえば、中国が舞台の妖怪昔ばなし短編集。
『怪奇・幻想・奇妙・妖怪』って言葉にピクッとする方なら、どストライク間違いなしの一冊です。
しかし当初一話完全読み切りだったこのシリーズは、途中から急に続きものとなっていきます。

私は読み切り好きで続きものは好まないので残念です
そしてこの後2冊出版されますが、ものすご~く中途半端に続きとなったまま、その続きは今だ出版されていない。

はず。たぶん。
(※2011年時点)
モロ先生はシリーズ作品の続きをコンスタントに出さないので、この作品にもオチがつくのかどうか、

微妙~
諸星大二郎【諸怪志異(一)異界録】
出版情報
アクションコミック
『諸怪志異(一)異界録』
・作者:諸星大二郎
・短編全11話
・発行所:双葉社
・1989年発行
・定価700円
集録作品
・犬土
・異界録
・妖鯉
・幽山秘記
・鬼城
・小人怪
・魔婦
・三呆誤計
・花仙境
・毛家の怪
・連理樹
作品ピックアップ
妖鯉
強欲な成金男が土地の盟主が所有する養鯉池を金と暴力で強引に奪いとります。
領主は殺され遺体は池に投げ込まれ、息子は重症を負い追っ手から逃れるため村を離れました。
父親を弔いたいと息子から頼まれた五行先生は、阿鬼をつかって池に沈んでいる亡骸を探しますが見つかりません。
しかし阿鬼が父親の魂魄を近くに感じるというので後を追うと、新たに領主となった男の家にたどり着きます。
中では養鯉池を手に入れたお祝いの真っ最中、宴席には大皿に盛られた立派な鯉が一尾。
領主はそれを来客に勧めますが何故だか誰も箸をのばしません。
皆その鯉からただならぬ雰囲気を感じ取っているのですが、悦に入った領主はそうとは気づかず夢中になって鯉を食べすすめます。
そして、鯉の心臓を食べ終わった途端・・
小人怪
堅物と評判の男がいました。
男は融通のきかない石頭で、他人にも厳しくいつも煙たがられていました。
ある夜仲間との酒宴の席で、市外の空き家で起こる怪事が話題になります。
男は仲間に焚き付けられ、その空き家に一晩泊まり真偽のほどを確かめることになりました。
何事もなく時が過ぎ真夜中になった頃、男の前にネズミが数匹現れ、
何やらお芝居のようなことをはじめ出したのですが、
それは男の日常を模倣したものでした。
そして、清廉潔白を豪語する男にとって口が裂けても言えぬ
あらぬ場面を演じ始めたのです・・・
諸星大二郎【諸怪志異(二)壺中天】
出版情報
アクションコミック
『諸怪志異(二)壺中天』
・作者:諸星大二郎
・短編全11話
・発行所:双葉社
・1991年発行
・定価750円
集録作品
・壺中天
・盗娘子
・山都
・邪仙
・巫蠱
・眼光娘娘
・拘屠王
・封裸
・篭中児
・三山図
・天開眼
作品ピックアップ
壺中天
壺の中に広がる異次元で宝を探すお話。
古美術マニアの男は、骨董商からえらく古びた壺を手入れ女房の怒りを尻目にご満悦。
すると間もなくして、その壺を買い取りたいという老人が自宅に現れます。
欲をかいた女房はここぞとばかりにふっかけますが、老人は高額過ぎると断り
代わりに家から持ち出さず、一晩あることに使うだけでいくらか謝礼を支払うと言い出しました。
男はおかしな話になったと売らなかった事を後悔しますが、妻はこれからいくらでも稼げると期待します。
その夜、
老人は自分の腰に縄を巻き付け反対側の先を男に持たせ、合図をしたら引っ張ってくれと言い残し何と壺の口から中に入ってしまいました。
驚きながらも待つこと 分。妻がしびれを切らす頃、壺の中から合図が!
言われていた通り男が縄を引くと壺から再び老人が現れ、分け前だといって金の塊を男に手渡します。
これは宝の壺を手に入れた!と狂喜した二人はさっそく次の日の晩、老人を真似して宝を探しに壺の中へ・・・

結局女房は異界から宝を持ち帰ることに失敗し命を落としますが、男は異界で宝に囲まれて暮らすという幸せを手に入れたのでした。哀れ女房殿・・
山都
山中で道に迷った男が妖怪の棲みかに迷い込みます。
人間だとバレたら殺される!
男は自分も妖怪だと偽りその場を切り抜けようとしますが、メスの妖怪に見初められ逃げ出す機会を失ってしまいます。
妖怪達と暮らす中で、男は懸命に妖怪のふりをしますが

ほんわか癒し系ストーリー
巫蠱
悪党同士の騙し合い。
『巫蠱』という毒を用いた妖術を得意とする老師には四人の弟子がいました。
ある日師匠は、留守中に一番強い巫蠱を作り上げた者を正式な後継者とすると言い残し旅に出ます。
正式な後継者と認められれば、師匠がまだ誰にも伝授していない奥義が授かれると思った四人は、より強力な呪いを込めた巫蠱つくりに励みます。
しかしそんな中、弟子の一人が巫蠱の毒にあたって死んでしまいました。
この中に犯人がいる!
そう考えた残りの3人は《生き残った者が後継者だ!》とお互いの命を奪いにかかります。

どんでん返しのどんでん返し。上には上がいることを肝に命じましょう。。
篭中児
神によって閉ざされた呪われた村のお話。
飢饉の餓えに苦しむ村人は、我が子を取り替え殺して食べた。
その行いが神の怒りに触れ、閉ざされた世界の中で永遠に餓えに苦しむことに
諸星大二郎【諸怪志異(三)鬼市】
出版情報
アクションコミック
『諸怪志異(三)鬼市』
・作者:諸星大二郎
・短編全10話
・発行所:双葉社
・1999年発行
集録作品
・鬼市
・羽化庵の来訪者
・石の中の女
・倀鬼
・空園の戦い
・艮嶽の龍
・推背図
・小玉
・天后
・鬼弾
作品ピックアップ
石の中の女
陶という男が骨董屋の店先で
磨いたようにつるつると丸く見た目よりずっと軽い
ちょっと変わった石を見つけます。
買って帰って磨いてみると
石の中から女の姿が浮かんできました。
磨けば磨くほど鮮明になっていく女の姿に
陶はすっかり心を奪われてしまいます。
飽かず女を眺めていたある日
何と石の中の女が陶に話しかけてきたのです。
諸星大二郎【諸怪志異(四)燕見鬼】
出版情報
アクションコミック
『諸怪志異(四)燕見鬼』
・作者:諸星大二郎
・短編全6話
・発行所:双葉社
・2005年発行
集録作品
・万年楼
・鶏鳴村の襲撃
・破山剣
・霊山
・土中の怪
・麗卿
・関連地図
あらすじ
阿鬼が成長して『燕見鬼』と名乗るようになってからのお話。
五行先生の命により『推背図』という予言書を手に入れるため
刀剣ひとつで長く危険な旅にでます。