高橋葉介【ミルクがねじを回す時】
出版情報
高橋葉介作品集1
『ミルクがねじを回す時』
・短編全12話
・発行所:朝日ソノラマ
・1987年発行
・定価980円
集録作品
・ミルクがねじを回す時
・キツネが原
・追跡行
・運命の花、カメレオン、不発弾
・腹話術
・卵
・墓堀りサム
・死人街奇譚
・客
・遊介の奇妙な世界
・笛
・妖獣の女王
概要と主観
本日は、高橋葉介さん作『ミルクがねじを回す時』をご紹介。高橋葉介さんも大好きな漫画家です!
毛筆の太いタッチと遠近法から作られる画風は独特で、スーッと、しかもドップリとその世界に引き込んでくれます。
吹き出しは比較的少なく、間をたっぷりととった絵本のようなスタイルが随所に用いられています。
深い闇の中で語られる、心がドロッとする様なストーリーは、恐怖でも、ホラーでもない。これぞ『怪奇幻想』

そうかといえばコミカルな作品も多いのですが、そちらには興味ありません。
作品ピックアップ
腹話術
孤児となった少年は得意の腹話術で日銭を稼ごうとします。
見事な話術に人々は喝采を送りますが、拍手だけで誰もチップを払ってはくれません。
やがて一文無しとなった彼はある日、雪の降る街の片隅でとうとう生き倒れでしまいます。
すると街中からやさしい声が・・
墓堀りサム
終末の迫った人類の為に誰かが作った人造人間。
放っておけば悲惨な最後を迎える人間の為に、彼は苦しまずに死ねる薬を配り、墓を掘り、亡骸を埋め続ける。
誰もいなくなるその日まで・・

彼の最後のセリフが胸に刺さる。
もしも………
もしも世界中の人間がみな死に絶えて……
そしていつかこのおれも壊れる時がたら、
いったい誰がおれの墓を建ててくれるのだ?引用:『墓掘りサム』より
笛
不治の病で死が迫った少年が、ある日両親にこう言います。

昨日悪魔が迎えに来たけど、僕の笛が気に入ったから、生かしておくことにしたって。
少年は死なず、ずっと笛を吹き続けます。
両親が亡くなり、医者が亡くなり、人類が滅亡しても、
地上でただ一人、彼は笛を吹き続けます。

高橋葉介の魅力満載。黒くしっとり暗く穏やか。そんな感じの一話です。